0120-905-230
一部のIP電話:050-5433-8094
(受付時間:平日9時~18時)
  1. TOP
  2. お役立ち情報
  3. お役立ち情報
  4. 溶接ロボットの活用 -協働ロボットの導入手順と注意点を解説-

2023.08.01

  • お役立ち情報

溶接ロボットの活用 -協働ロボットの導入手順と注意点を解説-

溶接作業の効率化や品質向上、作業者の安全確保の観点から、溶接ロボットの導入が注目されています。本記事では、溶接ロボットの概要などの基本的な知識について解説します。また溶接作業を行うまでの導入手順や注意点も併せて紹介するので、ロボット導入を検討している方はぜひご確認ください。

■溶接ロボットの基礎知識

はじめに、溶接ロボットの概要と、溶接作業にロボットを用いるメリットやデメリットについて解説します。ロボット導入の際に想定される費用の概算も紹介するので参考にしてください。

溶接ロボットとは
 

溶接ロボットは、工場内における溶接作業を人間の代わりに行う産業用ロボットの一種です。ロボットアームの先端部分に溶接トーチを取り付けることで、事前に設定した特定の箇所へ溶接作業を自動的に実行します。

安全柵なしで作業員と共同作業ができる協働ロボットの登場によって、溶接の手順や動きをロボットへ設定する「ティーチング」を、直接ロボットアームを動かして行う「ダイレクトティーチング」でできるようになり、ロボットの設定についての専門的知識のない作業員でも行えるようになりました。

溶接ロボット導入のメリット

溶接作業では強い光や有害物質が発生して、作業員の健康を害する恐れがありますが、ロボットの活用で作業者のリスクを低減できます。また、溶接ロボットは昼夜を問わずに繰り返し溶接作業を続けられるため、人手不足を解消し生産性向上につながります。

多品種少量生産の自動化においては、ティーチング時間の短縮が求められますが、協働ロボットであれば直感的にティーチング作業ができる機能(ダイレクトティーチング)を備えています。さまざまな生産ラインに適用しやすく、効率的な生産を実現します。溶接ロボットはロボット先端に取り付けた溶接トーチを一定速度で動かしながら溶接作業を行いますが、レーザー変位計などを用いた位置補正を加えると、より高い精度での溶接作業が可能です。

溶接ロボット導入のデメリット

溶接ロボットの導入時には、ロボットに動作を教えるティーチング作業が必要で、特に高精度な動作を設定するには作業内容に関する専門的な知識や十分な作業工数が必要です。また、基本的にロボットはティーチングした通りの動きしかできないため、作業内容に応じた溶接位置の柔軟な変更・調整や、ティーチング自体に不備があった場合に不具合品を量産してしまうといった課題があります。

導入コスト

溶接ロボットの導入にかかるコストとして、ロボット本体に加え、溶接機やロボットの手先に取り付ける溶接トーチなどの周辺機器の費用があります。弊社で取り扱う溶接ロボットシステムでは、協働ロボットにDAIHENやFroniusなどの溶接機を組み合わせています。コストの目安として、コストパフォーマンスを重視するなら1セットあたり950~1350万円、高品質な溶接を求める場合や、生産性を高めるため溶接と別の作業を連続して行う場合などは、必要な機器も高額となるため1250~1650万円を検討しておく必要があるでしょう。その他、ロボットの故障時の修理費用なども考慮する必要があります。

また、大きな初期投資が難しい場合は、クレジットサービスによる分割払いも選択肢の一つとなるでしょう。
※「クレジットサービスによる分割払い」についてはこちらで紹介しています。

■溶接ロボットの種類

代表的な溶接ロボットとして、スポット溶接ロボット、アーク溶接ロボット、TIG溶接ロボットの3つについて解説します。

スポット溶接ロボット

スポット溶接は、自動車の製造工程などで多く用いられている溶接方法です。重ね合わせた金属同士を上下から電極で挟み込み、その間に大電流を流して溶接します。スポット溶接ロボットは金属を挟み込む形の電極がアームの先に取り付けられています。多くの溶接作業を繰り返すと電極自体が摩耗していくため、挟み込む位置や力加減などの補正が必要です。なお現在のところ、スポット溶接は(アーク溶接やTIG溶接と異なり)協働ロボットでは対応できません。

アーク溶接ロボット

アーク溶接ロボットは、電極棒に高電圧をかけて発生するアーク放電の熱を利用して金属を溶接するロボットです。アーク溶接は、電極棒自体も溶けて金属に交じりこみ、溶接部を強固にする役割を果たします。そのため電極棒が消耗すると、適切なタイミングで新たな電極棒を供給するシステムが重要です。アーク溶接ロボットを使用する際には、電極棒の消耗を見極め、新たな電極を継ぎ足すためのワイヤ送給装置が必要となります。

アーク溶接は、使用する電極やガスにより種類が分かれます。次項で紹介するTIG溶接のほかに、MAG溶接やMIG溶接といった種類があります。アルゴンやヘリウムのような不活性ガスを使用する手法では、難易度が高いとされるアルミ溶接にも対応が可能です。
MAG溶接
MIG溶接
アルミ溶接

TIG溶接ロボット

TIG(タングステン-不活性ガス)溶接ロボットは、アーク放電を利用した溶接方法の一つで、特徴的なのは電極棒に、融点が高く溶けないタングステンを使用する点です。タングステンの電極棒は、溶接過程で安定したアーク放電を持続できます。このロボットは、溶接部を大気中の酸素や窒素から保持するために、不活性のアルゴンガスを使用して溶接部を遮蔽します。また、必要に応じて溶加材を横から追加して溶かす手法もあります。

■協働ロボットを使って溶接作業を行う際の導入手順と注意点

協働ロボットによる溶接作業の自動化を導入する際の一連の手順と注意点について解説します。

導入手順

基本的な導入の流れと、各手順におけるポイントについて紹介します。

【手順① 対象作業に基づくロボットの選定】
新規にロボットを導入する際は、対象となるワーク、設置スペース、動作環境、電源、生産目標といった制約条件を整理しましょう。それらの条件に基づいてロボットのサイズ、精度、速度、可搬重量、コストなどの要求仕様を洗い出し、ロボットを選定します。要求仕様に適合するロボットの候補がなく、設置環境自体を見直さなければならない場合もあるため、ご注意ください。

【手順② ロボットの設置とリスクアセスメント】
選定したロボットを現場に導入する際には、実際の作業手順を基にリスクアセスメントを実施します。このとき実際の溶接作業だけでなく、作業内容をロボットにティーチングする際の手順に関しても、忘れずにリスクアセスメントを行う必要があります。許容できないリスクが見つかった場合には、安全装置の導入などのリスク低減対策を行います。また、リスクアセスメントの結果は現場の作業者に十分周知しなければなりません。

【手順③ ロボットのティーチング】
ロボットを現場に設置したあとは、実際にロボットが溶接作業を行うときの一連の動きをティーチングします。タブレットなどを用いたGUI操作や、ロボットを直接手で動かすダイレクトティーチングによって容易に位置決め作業ができます。溶接作業の場合は、併せて溶接速度や溶接機の電流電圧といった条件を調整する必要があります。ティーチング作業が完了し、問題ないことを確認したら作業を開始します。

導入時の注意点

ロボット導入の目的は、自動化による生産性向上である場合が多いでしょう。そのため、想定する作業を実施でき、目標の生産能力を達成できるロボットを選定することが重要です。協働ロボットにはティーチング作業を容易にする機能が備わっていますが、高精度かつ高速な作業を可能とするには、溶接作業を熟知した作業者およびティーチング作業を行う工数の確保が必要です。ロボットの操作に不慣れな場合、ロボットが想定外の動作をする可能性があるため、安全面の対策は十分に注意して行わなければなりません。

\具体的な溶接ロボットを知りたい/
当社でお取り扱いしている
溶接ロボットシステムについて
ご紹介しています。