2021.12.28
ロボットハンド(エンドエフェクタ)とは? -種類ごとの特徴と選定時のポイントを解説-
製造業や物流業をはじめ、研究分野や医療分野など、さまざまなシーンでロボットアームは活躍しています。ロボットアームの指先として、実際にワークに触れる部分がロボットハンド(エンドエフェクタ)です。
ロボットハンドにはいくつか種類がありますが、それぞれどのような作業を行えるのでしょうか。この記事では、ロボットハンドの特徴や種類、選定時のポイントなどをご紹介します。
■ロボットハンド(エンドエフェクタ)とは
人の手は、指先でものを掴んだり、道具を持って作業をしたりといった細かい作業を行えます。ロボットにおいて、人の指先に当たるのがロボットハンドです。ものを掴んだり吸着したり、ネジを回したりと、ロボットアームの先端に取り付けてワークに影響を与える部分なので、「エンドエフェクタ」とも呼ばれます。
ものを掴む用途のロボットハンドは、人の手の感覚に備わっている「適度な力加減で柔らかいものを掴む」動作が難しいとされていました。しかし近年は、触った感覚を電気信号に変換する触覚センサーが搭載されたロボットハンドも登場しています。 野菜や果物など、個々で柔らかさの異なるものも掴めるようになり、従来と比べ人の指先に近い繊細な作業も可能です。
■ロボットハンドの種類
ロボットハンドは、いくつかの種類に分けられます。ここではロボットハンドの種類と、それぞれの特徴をご紹介します。
グリッパ(把持ハンド)
グリッパ(把持ハンド)は、人の指のような部分でワークを挟んで掴むハンドです。2本爪や3本爪、4本爪などのタイプがあり、ワーク形状や材質に合わせて、指先の形状やワークと接触する部分の素材を変えることもあります。 電動アクチュエータやエア、油圧などが駆動力で、掴む力や速さに応じて使い分けられます。
吸着ハンド
吸着パッドにワークを吸い付けて持ち上げるハンドです。吸着パッドが空気を吸い込み真空状態を作り出すことで、ワークの吸着を行います。 電動吸引ポンプが一体になった吸着ハンドもありますが、そうでない場合はエアコンプレッサーを用いたエア制御装置が必要です。
磁力ハンド
磁力によって、鉄や鋼といった磁性のある金属を持ち上げるハンドです。電流のオンオフを切り替えて、ワークを持ち上げたり離したりする動作を行います。 ただし、一部のステンレス鋼と、アルミや銅など多くの非鉄金属は磁性がないため、磁力ハンドを使用できません。
用途別専用ハンド
用途別に特化した専用ハンドもあります。溶接やネジ締め、液体を一定量ずつ注ぐ分注、紫外線照射など、さまざまな作業の専用ハンドが存在します。
■ロボットハンドを選ぶ際のポイント
多くの種類があるロボットハンドですが、選定の際はどのような点に注意すれば良いのでしょうか。ロボットハンドを選ぶ際に確認したいポイントをご紹介します。
対象物の材質や形状
ロボットハンドは、ワークの材質や形状によって使用できる種類が異なります。 例えば、吸着ハンドは吸着パッドが穴に重なると真空状態を作れないため、穴の開いているワークを持ち上げることができません。磁力ハンドも、持ち上げられる対象が磁性のあるものに限定され、曲面の保持力も弱いです。
ワークの材質や形状に適したロボットハンドかどうか、事前に確認が必要です。
把持できる可搬重量
ロボットハンドが把持できる可搬重量の確認も必要です。グリッパは挟み込む力が弱いと重量物を持ち上げられないですが、力が強すぎると製品の損傷につながる可能性があります。 吸着ハンドの場合も、吸着パッドを増やせば重量物を持ち上げられますが、吸引にかかる時間が増して作業サイクルに影響を及ぼします。
ハンドごとに特徴が異なるので、把持できる可搬重量を確認し、許容範囲内で使用するようにしましょう。
対象の硬度や製品面
対象が柔らかいか、どこを掴んで良いのかといった要素も、ハンド選定には欠かせません。 柔らかいものを掴む用途で、グリッパを使用するのは困難です。素材によっては掴むことで傷がつく可能性もあるので、製品となった際に見えない面を掴むといった動作方向の検討も必要です。
一方で、吸着ハンドは柔らかいものに対応できますが、吸着の跡がついてしまうことも考えられます。対象の硬度や製品となった際の外観なども、ハンド選定においては考慮しなければならない要素です。
安全性
産業機器の種類に関わらず、安全に使えることは選定時の大前提です。溶接や紫外線照射など、人体に影響のある作業を行うハンドを使用する場合は、安全対策とリスク管理も合わせて検討する必要があります。
作業効率
ハンドの動作速度が遅いと、作業効率が悪化してロボットの導入効果も下がります。作業効率も、ハンド選定時のポイントのひとつです。
保守性
吸着ハンドの場合はパッドの摩耗、磁力ハンドの場合は経年劣化による磁力の低下などが起こりえます。定期的に消耗部品を交換するなど、予防保全を実施することで大きなトラブルは避けられますが、メンテナンスや修理の間は稼働を止めなければなりません。稼働停止時間が大きいほど、ロボットの導入効果は下がります。
予備機を用意してコストとのバランスがとれるか、稼働のストップ時間で容易に保守作業できるかといった検討も重要です。
■違いを理解して最適なロボットハンドを選定しよう
ロボットハンドにはさまざまな種類があります。作業に適したものを選定すれば、人の数倍の効率で作業を行うだけでなく、人体に影響のある作業をこなすことも可能です。 また、ロボット導入時に気になるのがプログラミングや設定作業などにかかる手間ですが、協働ロボットによっては、ハンドメーカーのソフトをダウンロードして簡単に設定できる場合もあります。手間をかけずに導入できる点も、ロボットハンド選定時の基準になるはずです。 ハンドごとの特徴を理解し、用途に適したロボットハンドを選定しましょう。